宇宙飛行士の特性
2023年2月28日、新たに二人の宇宙飛行士候補者が誕生しました。今回、応募総数4127名、倍率2000倍を超える難関をくぐり抜けたのは諏訪理さんと米田あゆさんの2名。この2名は、約2年間の基礎訓練の後にJAXA宇宙飛行士に正式に認定されれば、国際宇宙ステーション(ISS)や日本実験棟「きぼう」をはじめ、月周回有人拠点「ゲートウェイ」や月面活動などのミッションへの参画が期待されています。
宇宙飛行士の仕事
1992年に毛利衛宇宙飛行士が日本人として初めて宇宙へ飛び立って以来、JAXA(旧NASDA)から、計11名の日本人宇宙飛行士が宇宙を舞台に活躍してきました。現在の宇宙飛行士の主な仕事は、国際宇宙ステーションに滞在し、微小重力や真空といった宇宙ならではの環境を活かした様々実験、研究を行うこと。また、国際宇宙ステーションおよび日本の宇宙実験棟「きぼう」の運用、修理、維持などを行ったり、宇宙服を着ての船外活動を行ったりすることです。
宇宙で活躍しているイメージの強い宇宙飛行士ですが、宇宙での活動時間は限られており、実は多くの場合、5~10年に1度宇宙でのミッションに参画する程度です。そのため、その他のほとんどの時間は地上で仕事をしています。地上では、ミッションのための訓練を受けたり、宇宙に行っている飛行士のサポートをしたり、自分の専門性を活かした装置開発や計画立案等の業務を行っています。さらには、テレビなどのメディアに出演したり、講演活動を行うなどして、宇宙での体験や魅力、宇宙開発の重要性などを伝えています。
宇宙飛行士選抜試験
宇宙飛行士になるには、まず、JAXAが行う選抜試験に合格しなければなりません。そこで、宇宙飛行士候補者として選抜されれば、約2年間の基礎訓練を受け、正式に宇宙飛行士として認定されるのです。認定された後は、宇宙でのミッションに備え、知識やスキルの向上のための訓練を続けることになります。見事ミッションに選ばれれば、約1~2年ほどのミッションのための専門的な訓練を受け実際に宇宙へ飛び立つことになります。
では、宇宙飛行士選抜試験とはどのような試験なのでしょうか。2021年度に募集が開始した最新の宇宙飛行士選抜試験の募集要項によると、応募条件は、基本的に2つ。3年以上の実務経験を有することと身長(149.5以上190.5 cm以下)、視力(両眼とも矯正視力1.0以上)、色覚(正常)、聴力(正常)に関する医学的要件を満たすことでした。前回行われた2008年度の募集内容と比較して、学歴不問、実務経験も分野職業形態によらないものとなった点、医学的要件も体重の項目の撤廃となったことなど大幅な応募条件の緩和がなされました。
応募の間口が広がり、多様で幅広い人材の応募が期待される中、宇宙飛行士として求められる人物像はどんなものなのでしょうか。
JAXAは応募要件の中で求める人物像を以下のように記述している。
(1) 国際共同事業、多国籍なメンバーシップのチームの中において、日本の代表として、多様性を 尊重しつつ、ミッションを成功に導くための協調性と十分なリーダーシップを発揮できる。
(2) 来たる国際宇宙探査ミッションを見据え、様々な環境に対しても適応能力があり、宇宙という極限環境での活動においても、柔軟な思考と着眼点を持ち、自らを律しつつ、適時的確な判断と行動ができる。
(3) ミッション参加により得た経験・体験・成果を世界中の人々と共有する表現力・発信力があり、 それらを活用し人類の持続的な発展や次世代のために貢献する。
(「2021年度宇宙飛行士候補者募集要項」より引用)
宇宙飛行士は多国籍の人々とチームを組み、協働して過酷なミッションに挑戦していきます。そのため、国際的なチーム内で多様性を尊重し、リーダーシップやフォロワーシップを発揮することが必要でしょう。また、ミッション成功のためには宇宙空間、閉鎖環境といった過酷な環境下でのストレスやプレッシャーの中で冷静かつ的確な判断、行動をすることが求められます。加えて、月に行くなどという稀有な体験や成果を世界中の人々に共有すること、宇宙開発の意義や重要性を国民に広く伝え、理解を得る役割も宇宙飛行士は担うわけです。
「2021年度宇宙飛行士候補者募集要項」をもとに作成
参考文献
[1] https://astro-mission.jaxa.jp/astro_selection/item/Application.pdf
[2] https://humans-in-space.jaxa.jp/space-job/astronaut-work/