宇宙航空人材育成プログラム 将来の有人宇宙活動を支える宇宙医学人材養成プログラムの創出

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船外活動

 普段はISSで活動する宇宙飛行士ですが、時にはISSの外に出て、宇宙ステーションの組立、人工衛星の捕獲・修理・補給・再放出などの船外活動を行います。

 ただ、宇宙空間は真空や低温(-270度)といった過酷な環境であり、何もせずに外に出るとたちまち息ができなくなってしまいます。そこで、宇宙船の外に出て作業する場合には、宇宙飛行士を守るために、宇宙服を着用しなければなりません。
 この宇宙服のことをNASAでは船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)と呼んでいます。服は14層からなり、体温を保持したり、有害な紫外線、宇宙線や微小な宇宙塵から体を守る役割を果します。例えば、素肌に着用する冷却下着は長さ84mものチューブを縫込んだ下着で、チューブに水を流して体温が上昇するのを防ぎます。
 また、小型の生命維持装置が備わっており、呼吸により排出された二酸化炭素を取除いて酸素を供給するとともに熱を逃す役割も果たします。

EMUの詳細(NASA提供)(https://www.nasa.gov/image-feature/the-extravehicular-mobility-unit-emu)

 また、船外活動前の準備として、体を違う環境に慣らすための作業が行われます。

 ISS内部は1気圧、EMUの中は0.3気圧です。このように急に気圧が変わると、今まで血液に溶けていた窒素が溶け出し、泡となって血管を塞ぐ恐れがあります。そこで、あらかじめ酸素を吸い込んで窒素を追い出すプレブリーズという作業が必要です。簡単な手順は以下の通りです。

  • 船内の気圧を7気圧に下げたり、酸素を吸入するなどして、12時間前から体を慣らす。
  • 宇宙服を装着し3気圧に減圧、酸素を吸い込んでおく。
  • エアロックから船外に出て、作業をする。
  • 船内に帰ってきて、エアロックを再加圧して宇宙服を脱ぐ。

エアロックの様子(NASA提供)(https://www.nasa.gov/audience/forstudents/k-4/dictionary/Airlock.html)

 ちなみに、船外活動の最長記録は約9時間だそうです。

 また、日本人では土井隆雄さんが199711月に初めて船外活動を行いました。ISSの建設に必要なクレーンの性能検証や、衛星の回収を行いました。

 EMU120kgありますが、重力がない場所で着用するので問題にならないようです。では、今後月や火星に行った時の宇宙服(船外活動服)は、どのようなものになるのでしょうか?考えてみるのも良いかもしれません。

参考:

https://humans-in-space.jaxa.jp/faq/detail/000543.html

https://www.ewoman.jp/winwin/150/1/05/

https://iss.jaxa.jp/eva/eva01.html